• 介護
  • ICT
  • 比較
  • 導入

介護ICT化のメリット・デメリットを徹底比較|5,000事業所の実証データが導く「失敗しない導入」とは

介護ICT化のメリット・デメリットを徹底比較|5,000事業所の実証データが導く「失敗しない導入」とは イメージ

介護業界で加速するICT化。「業務効率化」「負担軽減」といったメリットが強調されますが、現場からは「使いこなせるか不安」「コストに見合うのか」といった懸念の声も聞かれます。
導入を成功させるためには、メリットだけでなく、多くの事業所がつまずく「デメリット(課題)」を事前に理解しておくことが不可欠です。
本記事では、厚生労働省による5,000事業所規模の大規模実態調査のデータを基に、ICT化の確実なメリットと、約9割の事業所が直面した「リアルな課題」について包み隠さず解説します。

介護ICT導入の完全ガイド
介護ICTのメリットから補助金、導入事例、現場定着のコツまでを網羅的に解説しています。併せてご覧ください。
介護ICT導入の完全ガイドを見る

データが証明する「3つの導入メリット」

介護施設でiPadを操作する女性の介護職員

まずは、導入に成功した事業所が実感している主要なメリットを整理します。これらは数千件のデータにより実証された効果です。

1. 「転記・入力」の激減による時間創出

最大のメリットは、記録業務における「転記作業」からの解放です。システムによるデータ連携(一気通貫)により、同じ内容を何度も書く必要がなくなります。

  • 文書作成時間の短縮:約8割(81.9%)
  • 転記作業の削減(一気通貫):約8.5割(84.8%)

2. 「情報共有」のスピードと質の向上

紙の記録を探す手間がなくなり、タブレットやスマホでどこでも情報を確認できるようになります。

  • 情報共有がしやすくなった:約9割(90.3%)
  • 事業所内の情報共有が円滑になった:88.0%

3. 「ケアの質」への還元

事務作業で浮いた時間は、利用者との関わりや職員の環境改善に充てられています。

  • 削減時間を「利用者とのコミュニケーション」に活用:52.0%
  • 削減時間を「職員の残業削減」に活用:39.8%

【要注意】データで見る「ICT化のデメリット・3つの壁」

ICT化は魔法の杖ではありません。導入にあたっては、多くの事業所が共通の課題(デメリット)に直面しています。ここでは、綺麗事ではない「現場のリアルな悩み」をデータで可視化します。

壁1:職員の「ITアレルギー」とスキル格差

最も大きな壁は、システムそのものではなく「人」の問題です。調査によると、導入における最大の課題として「パソコンやソフトに対する職員の苦手意識」を挙げた事業所は89.5%に達しています。

  • 「慣れていない、使いこなせない」というスキル不足
  • 「PCが得意でない方の入力内容が薄くなった」という記録の質の低下懸念

これらを放置すると、現場の混乱や心理的ストレスを招く可能性があります。

壁2:導入直後の「一時的な業務負担増」

「導入すればすぐに楽になる」とは限りません。操作に慣れるまでの期間は、従来の業務手順との調整などで、かえって時間がかかったり、負担が増えたと感じるケースがあります。

  • 「慣れるまで、想定より時間がかかった」
  • 「かえって時間や文書量の負担が増えた」と感じるケースも一部存在

データを見ても、導入1年目よりも、運用が定着した2年目以降の方が時短効果が高くなる傾向があり、初期段階での「産みの苦しみ」は覚悟する必要があります。

壁3:コストとシステム連携の難しさ

導入・維持費用はもちろん、システム選定の難しさもデメリットとなります。

  • 費用面の課題: 約9割が「導入のための費用補助」や「維持費」を課題としています。想定以上の費用がかかったという声もあります。
  • 連携の課題: 異なるソフト間でのデータ連携がうまくいかず、結局手入力が残ってしまう「システム間の壁」に87.0%が課題を感じています。

デメリットを乗り越える「3つの解決策」

スマホを活用した介護関連アプリの操作に悩む女性の介護職員イメージ

では、これらのデメリットを解消し、メリットを最大化するにはどうすればよいのでしょうか。成功事業所が実践している工夫を紹介します。

1. 「業務フロー」ごと変える勇気を持つ

単に今の業務をデジタルに置き換えるだけでは失敗します。成功事業所の多くは、ICTに合わせて仕事のやり方自体を見直しています。

  • 情報共有の方法を見直した:87.7%
  • 記録・報告様式を見直した:84.9%

2. 環境整備と「使い続けられる」研修体制

「苦手意識」を克服するには、環境づくりと教育が不可欠です。Wi-Fi環境の整備や、タブレットに触れる機会を増やすなどの工夫が有効です。

  • 職場の環境整備を見直した:85.5%
  • OJTの仕組みづくり(研修の実施等):58.4%

3. 「2年後の成果」を見据えた長期視点

前述の通り、ICTの効果は「2年目以降」に最大化します。導入直後の混乱で諦めず、「まずは慣れる期間」と割り切り、長期的な視点で運用を継続することが重要です。

まとめ:デメリットを理解した上での導入こそが成功への近道

介護ICT化には、「職員の苦手意識」や「初期の負担増」といった明確なデメリットが存在します。しかし、これらは適切な準備と対策によって乗り越えられる課題です。
5,000事業所のデータが示す通り、壁を乗り越えた先には「文書作成時間の8割削減」や「情報共有の円滑化」といった、経営にも現場にも大きなリターンが待っています。
「良いこと」だけでなく「課題」もしっかりと認識し、自社に合ったペースでICT化を進めていきましょう。

出典について
本記事のデータは、厚生労働省「ICT導入支援事業 導入効果報告(令和3年度および過去の調査)」に基づいています。
ICT導入支援事業 令和3年度 導入効果報告取りまとめ
令和2年度ICT導入支援事業 導入効果報告まとめ
令和元年度 ICT導入支援事業 実績報告まとめ

プランのシミュレーションをはじめる