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介護インカム導入の教科書|選び方・費用・メリット・デメリットを全解説

インカムとは、介護施設で職員が離れた場所でも即座に会話できる無線通信機器です。人手不足の介護現場では、PHSや内線電話に代わる新しいコミュニケーションツールとして注目されています。
一方で、「種類が多くて何を選べばいいかわからない」「新しい機器に切り替えたいがコストが心配」といった声も少なくありません。
本記事では、2026年最新の介護インカム情報をもとに、機種タイプの比較から選び方、補助金情報までをわかりやすく解説します。
本記事では、2026年最新の介護業界向けインカム情報を網羅。専用端末型(トランシーバー・無線機・PHS)とスマホ連携型(アプリ)の徹底比較をはじめ、自施設に最適なインカムの選び方、導入コストを抑える補助金情報までを完全ガイドとしてまとめました。
目次- インカムとは何か
- 介護施設にインカムが必要な理由
- 介護にインカムを導入するメリット5選
- 注意すべきデメリット3選
- 介護で使われるインカムの種類と特徴
- 種類別に見る介護インカムの導入費用
- 施設規模や用途に応じたインカムの選び方
- 補助金が活用できる介護のインカムとは
- インカムとナースコールを連動させる方法
- 介護インカムのデメリット「耳が痛い」を解決する骨伝導タイプとは
- 介護インカムの導入事例
インカムとは何か

インカムとは、複数人が同時につながり、作業をしながら即時に会話できる通話機器のことです。
相互にやり取りする通信を指すインターコミュニケーション(intercommunication)や、インターコム(intercom)に由来する和製の省略表現・呼び名として、日本で広く使われています。
日本では、現場用通話機器を指す業界用語として「インカム」が定着しており、実際にはトランシーバーや無線機とほぼ同じ意味合いで使われることが一般的です。
インカムは本来、コールセンターや放送・管制室などで使用されるヘッドセット対応の同時通話が可能な機器を指しますが、実際には双方向通話が主流のトランシーバーや無線機とほぼ同じ意味合いで、あらゆる現場業務で使われていることが大半です。
なぜ介護にインカムが必要か

職員の負担軽減とケア品質向上のため
介護にインカムを導入することで、移動中や離れた場所にいても即時に連絡が取れるため、無駄な移動や待ち時間を削減できます。その結果、職員の負担軽減につながるだけでなく、利用者への対応スピードが向上し、QOL(生活の質)の向上にも寄与します。
介護ICTとしてインカム導入が進んでいる背景
2026年度(令和8年度)の介護報酬改定に向け、介護業界では生産性向上やICT活用が強く求められています。
人手不足が深刻化する中、移動時間の長さや情報共有の遅れは、現場の大きな課題となっています。こうした課題を解決する手段として、インカムは介護ICT機器の一つとして位置づけられ、導入施設が補助金や各種加算の評価対象となるケースがある点も、普及が進む理由の一つです。
介護にインカムを導入するメリット5選

① 口頭で伝えに行く手間を削減
離れた距離でもすぐに会話が行えるため「探す・歩く」時間が削減されます。
② 緊急時の迅速な対応
職員全員へ一斉通信ができます。そのため利用者の急変時や事故発生時の指示伝達もスムーズに行えます。
③ ハンズフリーで介助しながら通話可能
Bluetooth対応のワイヤレスイヤフォンを使用すれば、両手がふさがった状態でも通話が可能です。なお、従来型のインカムではハンズフリー通話に対応していない場合が多く、スマホ連携型インカムが主流となっています。
④ 新人教育ツールとして活用
先輩と新人の間で質問や指示出しがスムーズに行えるためOJT(現場研修)にも活用できます。
⑤ 緊急時の初動が早い(災害・急変時)
介護のインカムは、停電や事故発生時といった非常時にも大きな役割を果たします。また、異変を察知した際にすぐ職員間で連携できるため、事故の未然防止や被害の拡大防止にもつながります。
注意すべきデメリット3選

① 導入費用がかかる
インカムの導入には、本体に加えてイヤフォンやバッテリーなどの周辺機器の費用が発生します。また、高出力タイプのインカムを使用する場合は、無線免許の申請や手数料が必要になることもあります。一方で、インカムが介護ICT機器として認められた場合、国や自治体の補助金を活用して導入できる可能性があります。
② イヤフォンの長時間装着で耳が痛くなる
イヤフォンを長時間装着することで、接触部分の骨や皮膚に痛みを感じたり、耳の中に雑菌が繁殖して炎症を引き起こす恐れがあります。さらに、インカムのノイズや音量を高い状態で使用し続けると、耳への負担が増し、聴覚への健康被害につながる可能性もあります。
③ リーダー職への連絡集中による負担増の可能性
職員間のコミュニケーション量が増えることは大きなメリットである一方で、質問や判断をリーダー職に仰ぐ場面が増え、連絡が集中することで、業務負担が大きくなる可能性があります。
介護で使われるインカムの種類と特徴

一般的な箱型のインカムを「専用端末型」、スマートフォンにアプリをインストールして使用するタイプを「スマホ連携型」とし、それぞれの特徴や違いを比較します。 また、施設の通信手段として標準的に導入されている PHSも比較対象に加えています。
| 項目 | 特定小電力トランシーバー | デジタル簡易無線 | IP無線 | スマホインカム | PHS |
|---|---|---|---|---|---|
| 分類 | 専用端末型 | 専用端末型 | 専用端末型 | スマホ連携型 | 電話 |
| 主な特徴 | 通信距離が短いが安価 | 広域通信可・混信しにくい | 従来型インカムの形で距離制限なし | スマホがあれば利用可 | 使い慣れている人が多い |
| 通信距離 | 短い(100m〜500m) | 広い(1km〜5km) | 全国(スマホ回線) | 全国(スマホ回線/Wi-Fi) | 構内アンテナ範囲内 |
| 通話方式 | 1対複数(交互) | 1対複数(交互) | 1対複数(同時可) | 1対複数(同時可) | 1対1(電話) |
| 免許 | 不要 | 必要 | 不要 | 不要 | 不要 |
| 機能拡張 | ×(通話のみ) | ×(通話のみ) | △(位置情報など) | ◎(記録・翻訳・連携) | ×(通話のみ) |
| 導入コスト | 最安(端末代のみ) | 中(端末代+登録費) | 高(端末代) | 低(スマホ流用可) | 高(交換機・アンテナ) |
| メリット | 免許不要で即導入 | 災害時に強い | 完全防水/頑丈、物理ボタン操作 | 身軽、システム連携、多機能利用可 | 電話に特化、既存設備を利用 |
| デメリット | 壁や階層に弱い、混信のリスク | 専用端末を持ち運ぶ必要あり、申請が必要 | 専用端末を持ち運ぶ必要あり、費用が高額 | スマホ回線/Wi-Fi依存 | 一斉連絡不可、生産終了/入手難 |
専用端末型の課題と効果
特定小電力トランシーバー / デジタル簡易無線
通信距離に限界:階層・別棟で不安定になりやすい
拡張性が低い:他の介護ICT機器と連携しにくい
端末の持ち増え:スマホとの2台持ちが必要
操作がシンプル:ボタン中心で誰でも使いやすい
即時性が高い:ワンタッチで一斉通話が可能
災害時に強い:携帯回線に依存しない通信方式
IP無線
月額コストが発生:回線・サービス利用料が必要 本体が高額・重い:導入費用や携行負担が大きい
広範囲で通信可能:別棟・拠点間・屋外でも通話できる 一斉連絡に強い:緊急時の指示伝達がスムーズ
👉 介護のインカム導入におけるデメリット5選!現場の負担を減らす解決策とは
スマホ連携型の課題と効果
通信環境に依存:Wi-Fiや携帯回線が不安定だと音質に影響
スマホ操作が必要:ITに不慣れな職員には慣れが必要
バッテリー管理が重要:業務集中時に電池切れのリスク
端末を1台に集約:通話・記録・連絡をスマホで完結
拡張性が高い:見守り・ナースコール・記録システムと連携可能
ハンズフリー対応:ワイヤレスイヤフォンで介助しながら通話できる
導入しやすい:専用機器が不要で初期費用を抑えやすい
👉 スマホインカムを使った介護の事例とメリット【2026年最新版】
PHSの課題と導入効果
同時通話ができない:基本は1対1通話で一斉連絡に不向き 通信範囲が限定的:施設外・別棟では使えない場合がある 将来性に不安:サービス縮小・終了リスクが指摘されている
音声が安定:構内ネットワーク利用で通話品質が安定 内線通話が可能:ナースコールや内線電話として使える 操作が比較的簡単:電話感覚で使えるため定着しやすい
種類別に見る介護インカムの導入費用
| 通信ツールの種類 | 端末価格(目安) | 運用コスト(目安) |
|---|---|---|
| 特定小電力トランシーバー | 約5,000~30,000円 | 有線コードの断線/電池交換、故障/不具合による定期的な買い替え有 |
| デジタル簡易無線 | 約30,000~80,000円 | 年1回の電波利用料(約500円/台)+5年ごとの免許更新費用、バッテリー交換費 |
| IP無線機 | 約50,000~100,000円 | 月額通信料(SIM契約やサーバー利用料)、バッテリー交換費 |
| スマホインカム | 0円~(既存スマホ+イヤフォン流用時) | 月額500円~2,000円程度 |
| PHS | 既存・入手困難 | サービス終了・縮小に伴う維持リスクとコスト |
介護施設のインカム導入における費用は、目に見える初期費用や月額料金だけでなく、安定運用のための周辺設備やメンテナンスといった「隠れた経費」まで考慮することが、長期的な運用を成功させる鍵となります。
インカムの価格比較は下記のページでも紹介しています。
👉 介護施設のインカム導入費用を最小限に抑える方法
施設規模や用途に応じたインカムの選び方

施設規模や構造から選ぶ
ケースA:ワンフロアのみ・小規模デイサービス
推奨:特定小電力トランシーバー
理由:通信距離が短くても問題なく、月額コストがかからないため、最も安価に導入できます。
ケースB:多層階・複数サービス併設(特養・老健・送迎あり)
推奨:スマホインカム
理由:従来の無線機では届かない「階層をまたぐ連絡」や「送迎車との外線連絡」も、スマホ回線なら全国どこでも繋がります。入居・通所・送迎と多岐にわたる業務をスマホ1台に集約できるため、情報共有が劇的に効率化されます。
インカムを活用したいシーンから選ぶ
シーンA:訪問介護・送迎中も遠くの拠点と連絡したい
推奨:IP無線機 / スマホインカム
理由:モバイル回線を使用するため、距離を気にせず全国どこでも繋がります。送迎中の急変対応や、施設とのリアルタイムな連携を実現したいシーンに最適です。
シーンB:階層移動がなく、ランニングコストを抑えたい
推奨:特定小電力トランシーバー / デジタル簡易無線
理由:端末同士で直接通信するため月額料金がかかりません。ワンフロアや限られた範囲内での通信で、とにかく維持費を安く済ませたいシーンにおすすめです。
シーンC:職員が持ち歩くツールを1台に減らしたい
推奨:スマホインカム
理由:記録用スマホ、内線電話、インカムの機能を1台に集約できます。重い端末の2台持ちを解消し、業務効率を最大化させたいシーンに選ばれています。
補助金が活用できる介護のインカムとは

介護施設では、国や自治体の介護テクノロジー導入支援事業(介護ICT補助金)を活用してインカムを導入できる場合があります。
ただし、すべてのインカムが補助金対象になるわけではなく、厚生労働省が定める介護ICTの要件を満たす必要があります。
結論として、補助金活用を前提とする場合は、専用端末型よりもスマホ連携型インカムの方が対象になりやすいと言えます。
専用端末型インカム- 音声通話が中心で、業務データ化やシステム連携につながりにくい
- 記録・クラウド管理機能がなく、ICT要件を満たしにくい
- クラウド・アプリを活用する介護ICT機器として位置づけやすい
- 情報共有・業務効率化など補助金の目的に合致
- 導入効果(移動削減・連携強化)を申請時に説明しやすい
補助金を活用してインカム導入を検討する場合は、「介護ICTとして認められるか」を基準に機種選定することが重要です。
インカムとナースコールを連動させる方法

介護施設でナースコールとインカムを連動させるには、呼び出し信号をゲートウェイ経由でスマホやインカムに届けられる端末が必要です。このため、従来型インカムでは連動できず、スマホ連携型インカムの導入が必須となります。
まずは、既存ナースコールがインカム連携に対応しているか、対応メーカーを確認することをおすすめします。
連動の基本的な流れは以下の通りです。
- 利用者がナースコールを押す/センサーが異常を検知
- ゲートウェイを経由して職員の端末に音声通知+部屋番号表示
- 必要に応じてインカム通話で対応分担
この仕組みにより、呼び出し対応の迅速化や重複防止が可能となり、介護現場の安全性と効率が向上します。
👉 ナースコール×スマホで介護が変わる!呼び出しを耳へ届ける方法も紹介
スマホを活用したインカムのメリット
情報の「見える化」と「聞こえる化」の両立
音声だけでなく画面にテキスト情報を残せるため、聞き逃しを防ぎ、正確な情報共有が可能になります。
PHSの代替として1台に集約
これまで「ナースコール受信用PHS」「記録用スマホ」「連絡用インカム」の3台を持ち歩いていた環境を、スマホ1台に集約できます。
データログの活用
「いつ、誰が、どの呼び出しに対応したか」という履歴をデータとして蓄積できるため、スタッフの配置最適化や、事故防止の振り返りにも役立てることができます。
介護インカムのデメリット「耳が痛い」を解決する骨伝導タイプとは

介護現場でインカムを使用すると、長時間の装着で「耳が痛い」や蒸れて不快といった声が多く上がります。こうしたデメリットを根本的に解消するには、インカムと骨伝導ヘッドセットを組み合わせて使用する方法が有効です。
特徴・メリット
快適性:「耳が痛い」からの解放
耳の穴を塞がず、こめかみ付近の骨で音を伝えるため、従来のイヤフォン特有の痛みや圧迫感がありません。
長時間勤務や夜勤でもストレスフリーな装着感を実現します。
安全性:周囲の音と通信を両立 耳を塞がない構造で、インカムの音声を聞きながら入居者や周囲の生活音も同時に認識可能。 インカムに集中しすぎて周囲の異変に気づけないリスクを回避。
清潔さ:共有端末でも衛生的
耳に直接触れないため、スタッフ間での使い回しも心理的抵抗が少なく、清掃・消毒も容易。
外耳炎など耳トラブルの予防にもつながる。
介護向けの骨伝導ヘッドセットには、BONXとShokzが共同開発した「OpenComm2 PTT」などがあります。現場の声を反映した押しやすい通話ボタンなどの工夫により、使いやすさと利便性の高さが評価されています。
👉 介護現場のインカムは「骨伝導」が正解?耳を塞がないメリットと選定ポイント
介護インカムの導入事例
実際にスマホインカム BONX WORKを導入した介護施設の事例をご紹介します。
事例①: 社会福祉法人 洛和福祉会様 特別養護老人ホーム

◾️ 施設名:社会福祉法人 洛和福祉会様 特別養護老人ホーム
◾️ 過去のツール:インカム・PHS・iPod・iPad
◾️ インカムの種類:スマホインカム
導入前の課題
・複数の携行品を身につけて業務にあたる必要があり、インカムを携行し忘れてしまうケースがあった。
・送迎の連絡調整には待ち時間が発生し、朝礼の集合や解散でも移動時間が取られていた。
・見守りシステムはiPadやスマホでアプリを開いてる時しか通知を確認できない。
導入効果
・1対1の伝達から、個々が感じたことや申し送りを一斉にリアルタイムで共有できる。
・いつでも助けを呼べるため、新人の心理的安全性が向上し、独り立ちまでの期間が短縮。スキル習得の促進や離職防止にも役立っている。
・スマホとイヤフォンのみで業務に必要なシステムへアクセスできるようになり、インカムの携行漏れも解消された。
・朝礼をインカムで行うことで集合・解散の移動時間を約5〜10分削減でき、送迎時も施設とリアルタイム連携が可能となり、利用者の待ち時間が約10〜20分短縮された。
・スマホを閉じていても耳にアラートが通知されるようになった。
導入のポイント
介護システムをiPhoneへ一元化する取り組みを進める中で、インカムのアプリから内線/外線アプリやナースコールのアプリに自動的に切り替わる点が決め手となった。
事例全文を見る
👉 【介護×インカム導入事例8選】見守り時間増・残業減を実現した「声のICT」活用術
自施設に最適なインカム選びの最終チェック
施設の規模や階層に合わせて、コスパ重視の「特定小電力」か、距離無制限の「スマホ連携型(スマホインカム)」か、現場に最適なタイプを自由に選ぶことができます。
導入時は目先の価格だけでなく、月額費用やWi-Fi整備、故障時の保守管理、補助金まで含めたトータルコストで比較検討するのが失敗しないポイントです。
自施設の未来像に合った「最適なインカム」をぜひ検討してみてください。