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MCA無線とは?IP無線との違いや料金等を徹底解説!
移動無線センターが提供するMCA無線は、IP無線機が浸透する前までは「広域無線」として知られ、全国の支店を繋ぐ業務用、及び災害時向けの緊急連絡手段として活躍していました。 緊急連絡用の無線としては、いまだ根強い支持のあるMCA無線ですが、今回はMCA無線の導入を検討している企業向けに、IP無線との具体的な違いや、メリット・デメリット、各種料金などをまとめてご紹介します。
MCA無線とは
MCA無線とは、社団法人移動無線センターが提供する無線通信手段となり、サービス開始は1982年と非常に古い歴史を持つ半官半民の機関となります。 いまでこそIP無線機やスマホインカムなどが携帯端末として普及していますが、90年代から2000年初期にかけては全国通信が可能な無線端末として、JSMR無線と並んで高い需要を誇っていました。
MCA無線「mcAccess eとMCAアドバンス」を紹介
MCA無線には従来から提供されている「mcAccess e(エムシーアクセスイー)」と、2021年からサービスを開始した「MCAアドバンス」の2つの通信方法があります。「mcAccess e」も近年は端末のデジタル化が進み、「デジタルMCA無線」と呼ばれることもありますが、これはmcAccess eと同義となります。
mcAccess e(デジタルMCA)とMCAアドバンスの違い
mcAccess e(以下デジタルMCA)もMCAアドバンスも同じデジタル無線機となり、基地局を介して通信をします。両者とも同じ周波数帯のため、免許申請はそれぞれ必要なものの、通信に互換性があります。 デジタルMCAとMCAアドバンスを比較すると、デジタルMCAは従来の無線機を踏襲しているため、見た目や使用方法は業務用簡易無線やIP無線機に近いものがあります。 一方でMCAアドバンスは液晶タッチパネルとなるので、業務用無線よりはスマホを操作する感覚に近いです。また、地図共有や画像の配信ができるのもMCAアドバンスの特徴となり、いずれも災害時の緊急連絡を想定した仕様となっています。
MCA無線を使うときに免許は必要?
MCA無線も業務用簡易無線と同様の免許局となるため、利用にあたっては陸上無線協会を通じた免許申請が必要となります。ただし、一般業務用無線機のような無線従事者の資格取得は必要ないため、MCA無線の販売店が一括して申請手続きを代行してくれます。
MCA無線の特徴とは
MCA無線は全国の基地局を介して通信エリア内で連絡を取り合うことができる移動無線端末です。通信エリアは1つの基地局に対して半径20km以上と簡易無線機の1~5kmとは大きく通信範囲が異なります。 端末はハンディ機と車載器があり、車載器は事務所に据え置くことで指令局としても活用することができます。モトローラや京セラなど、古くから無線通信技術に長けているメーカーが端末を提供しているのも特徴的です。
MCA無線の主な利用シーン
MCA無線を利用する業界は「運輸・物流・タクシー・自治体・協会」などが挙げられます。普段の業務では全国の支店間の業務連絡のやり取りに使用することが想定されますが、MCA無線を配備する主な理由は「災害時」のためとなります。
MCA無線の専用周波数は災害時に活躍する
災害が発生すると、スマホやIP無線が使う基地局は飽和して電話が繋がりにくい状態が一定時間続きます。また、政府や警察・消防・救急車の無線を優先確保するとも言われています。 一方でMCA無線は移動無線センターの自営基地局のため、スマホやIP無線が圏外の状況に陥っても、自前の基地局を介して安定した通信が可能となります。また、移動無線センターの基地局を使わずとも、LTE通信をすることも可能です。
MCA無線の通信距離・エリアとは?全国対応も可
誤解されることも多いですが、MCA無線の通信エリアは無条件で全国というわけではありません。基地局は全国各地のセンターが管理しており、すべての基地局を利用することで全国エリアをカバーすることができますが、料金プランによっては関東地方のみ、近畿地方のみ、といった使い方も可能です。
MCA無線の料金体系を解説
上述したようにMCA無線は各地域のセンターによって若干料金プランが異なります。
■MCA無線の料金プラン(月額) ・シングルエリア 2300円~ ・アーバンシングルエリア 2200円~ ・ワイドエリア 2500円 ・アーバンワイドエリア 2400円 ・ライトデータ 500円~ ■付加利用 200円~500円(月額) ■登録料 1000円~/台
シングルエリアは1つの基地局のみを使用できるため、通信範囲は20km~となります。ワイドエリアは関東や近畿といった地方・地域内の複数の基地局を利用することができるので、関東地方であれば、ほぼ全域をカバーできます。 また、付加利用に登録することにより、全国エリアを網羅することも可能となります。付加利用のオプションは「ネットワーク」と「複数地域ワイド」の2つがあり、前者は全国で通信ができるため、東京本社から大阪支店に連絡することもできます。後者は他地域間の通信はできませんが、関東の移動無線センターに登録した端末を近畿や北海道と全国で使うことができます。
MCA無線のデメリットとは
MCA無線は災害時でも基地局がパンクすることなく使えることが最大のメリットとなりますが、一方で通常の業務レベルでの使用には幾つかのデメリットが挙げられます。
1.MCA無線は通じないエリアが多い
上述した料金プランによると、ワイドエリアの利用に付加利用のオプションを付けることで全国通信が可能となりますが、あくまでも基地局がカバーする範囲内のみとなります。基地局の範囲は20~40kmとなりますので、郊外エリアや山間部では通じないエリアが多発します。 そのため、スマホ感覚で通信できないことは、MCA無線のデメリットとなります。
2.音声・音質が不安定
MCA無線は災害時でも圏外に陥ることなく安定した通話が可能となりますが、その一方で音声や音質は決していいとは言えません。 端末はデジタル無線のためノイズは入りませんが、建物など大きな障害物があると、音量が小さくなったり、声が途切れ途切れになることもあります。屋外で使用すると、風切音もします。 音質に関しては一概に良い悪いは言えませんが、昨今は無線機メーカー各社がスピーカーの品質向上に力を入れていますし、後述するスマホインカムのブランドは、いずれも高品質なイヤフォンマイクを開発しており、デジタルノイズキャンセリングや風切音対策に長けています。
MCA無線とIP無線機の違い・比較
無線機による全国エリアの通信を検討している企業は、販売店からMCA無線とIP無線機のいずれかを提案されることでしょう。 それでは、MCA無線とIP無線機を比較検討した際、両者の違いや優位性を下記にご紹介します。IP無線とは?メリット・デメリットを初心者に向けて解説!
1.通信距離/エリアはIP無線機にメリットが大きい
上記で解説したように、MCA無線は利用プランによって全国通信が可能となりますが、IP無線やスマホのような広域はカバーされていません。IP無線機はスマホの電波が届かないところでは圏外となりますが、昨今は郊外・田舎山間部であっても大抵のエリアはカバーされているので、業務レベルで支障が出ることはあまり考えられません。
2.通話機能・グループ機能に違いはない
一方でMCA無線とIP無線機の通話機能に違いはほとんどありません。両者とも個別通話・グループ通話ともに可能ですし、MCA無線は別途有料オプションに加入することにより、電話のような同時通話機能を付与することもできます。
3.初期導入費用はIP無線機が圧倒的に安い
月額のランニングコストはMCA無線で2000円~2500円の基地局利用料が発生し、IP無線機はSoftbankやNTTといったキャリアの基本使用料がかかります。MCA無線でもLTEを使うことができるので、その際は別途キャリアの申込みが必要となります。 毎月の維持費にそれほど差はありませんが、MCA無線は本体の端末が安い物でも15万円前後、最新機種は20万円から25万円前後と非常に高額です。
MCA無線とIP無線機はどちらを選ぶべき?
IP無線機が普及をはじめる以前は、企業が導入する広域無線といえばMCA無線が有力な選択肢でした。しかし、近年はインフラの整備が進み、IP無線機であっても災害時に使えなくなる時間は僅かですし、民間企業がBCP対策としてMCA無線を導入するには、費用面でどうしても不利になります。 そのため、もしMCA無線とIP無線機で迷っているのであれば、初期導入費用の安いIP無線機を選択するのが現実的かもしれません。
「BCP」対策でMCA無線はおすすめできるかどうか
BCPとは「事業継続計画」で、2000年頃から大手企業を中心に対策が練られるようになりました。 事業継続計画とは、災害時に迅速な事業復旧と継続を目指し、自社の損失を最小限に抑える対策を指します。その役割として、全国の支店や社員に一斉に業務指示を出せるグループ通話機能を持つ無線機が選択されています。 MCA無線機は災害時には確かに大きな活躍が期待できますが、普段の業務でも使用する場合はIP無線機が利便性が高いと言えます。
次世代機はスマホで通信「スマホインカム(スマホトランシーバー)」
これまではMCA無線とIP無線機を比較して解説しましたが、近年企業の間で注目されているのが、スマホと無線機のハイブリッドとなる「スマホインカム(スマホトランシーバー)」です。
スマホインカムの特徴とは
スマホインカムは、スマホ端末に専用アプリをインストールするだけで無線機として使用できるのが特徴です。メーカー各社が提供するサブスクリプションに登録することになりますが、料金体系はMCA無線やIP無線機とほぼ同じです。 スマホインカムはあくまでもスマホのアプリを使用するため、実機がありません。そのため無線機の故障やメンテナンスも不要となります。サブスクリプションの登録とメーカーの純正イヤフォンマイクを用意するだけで使用することができますし、スマホ本体を耳にあてての利用も当然可能です。トランシーバーアプリのBluetooth対応を紹介!スマホアプリとインカムの違いも解説
スマホインカムはMCA無線の代わりになる?
MCA無線の導入を計画している企業担当者は、災害時向けのBCP対策の一環として検討している人が多いですが、スマホインカムは日常の業務にも使うことができます。 「現在の業務で使用する予定はない」という方も、今一度普段の業務フローを見直してみてください。 昨今はDX(デジタルトランスフォーメーション)が日本でも叫ばれており、政府自治体もDXの推進に補助金などを実施しています。社内の業務や組織、フローをIT化することにより、競争力のある企業へと成長を促し、持続的な発展を目指すことを目的とするのがDXとなります。 無論、それはBCPを取り込んで考えることも可能で、スマホインカムはMCA無線と比較しても非常に親和性の高い通信手段ということができます。DXっていったい何?その意味や重要性、具体的な事例などを徹底解説
MCA無線の導入は慎重に。本当に最適な無線機を吟味しよう
ここではMCA無線の概要とIP無線機やスマホインカムと比較したときのメリットデメリットをご紹介しました。近年は無線通信機器のデジタル化が進み、MCA以外にも無線機の選択肢が増えてきました。そのため、現在MCA無線の導入を検討している企業担当者は、本当にMCA無線が自社の連絡手段として最適なのか、今一度社内で吟味してみるのがいいでしょう。無線機を業務活用するなら「BONX WORK」という選択肢