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介護ICT導入事例10選|業務効率化からインカム活用による連携強化まで

人材不足が深刻な介護業界において、ICTやロボットの活用は待ったなしの課題です。しかし、現場からは「具体的にどのような効果があるのかイメージしづらい」という声も少なくありません。
本記事では、厚生労働省のガイドラインや最新の介護ICT導入事例から、記録システム、見守りロボット、インカム活用など、業務効率化とケアの質向上を両立させた10の成功事例を厳選してご紹介します。現場の負担軽減と連携強化に向けたヒントとしてご活用ください。
1日5時間の定時巡視を0時間に削減
◾️ 施設名:株式会社アズパートナーズ アズハイム練馬ガーデン
◾️ 導入したICT:見守り支援システム(センサー)
取り組み内容
夜間の定時巡視による利用者の睡眠阻害と職員の業務負担を解消するため、センサーの正確性を検証した上で導入。オペレーションを見直し、覚醒時のみ訪室する運用へ変更した。
効果
1日に5時間かけていた定時巡視の時間を0時間まで削減した。また、深夜帯は7割以上の方が就寝している状態となり、利用者の睡眠の質が向上した。
ポイント
行政の了解を得て定時巡視を廃止した点が革新的です。単に機器を入れるだけでなく、「センサーの信頼性」を職員が実感するプロセスを経ることで、安心して巡視をなくす決断ができています。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドライン P.43 事例 19
1勤務あたりの歩数が半減し重複対応を解消
◾️ 施設名:ALSOKジョイライフ株式会社 ローズライフ京都
◾️ 導入したICT:BONX WORK、見守り支援システム(眠りCONNECT)
取り組み内容
広い施設での移動負担を減らすため、見守りシステムの通知を音声ツールと連携。9つのルームを使い分け、通知に対して誰が対応するかをその場で相談・調整する運用を確立した。
効果
無駄な移動が減り、職員の1勤務あたりの歩数が半減した。センサー通知への重複対応がなくなり、利用者のそばを離れずに優先順位を判断できるため、ケアの品質と安心感が向上した。
ポイント
効率化だけでなく「利用者の前から離れない」ためのICT活用という視点が素晴らしいです。小型デバイスとストラップ活用で、利用者に威圧感を与えず、かつ水没リスクも防ぐ細やかな配慮がなされています。
◾️ 関連記事:見守り支援システムとの連携で加速する介護現場のICT化と品質向上|ALSOKジョイライフ株式会社 ローズライフ京都様
見守り時間が約30%増加し情報伝達を効率化
◾️ 施設名:医療法人緑の風 介護老人保健施設いこいの森
◾️ インカム(Wi-Fi非対応軽量型)
取り組み内容
5階建て施設の伝言ゲーム状態を解消するためインカムを導入。情報の混線を避けるため、フロアや部署ごとに9つのチャンネルを設定した。
効果
介護職員1人1日当たりの見守り時間が88分から117分へ約30%増加。一斉連絡が可能になり、看護職員の対応時間も短縮された。
ポイント
部署やフロアごとに細かくチャンネルを分ける運用設計が秀逸です。必要な情報が必要な人に届く環境を作ることで、移動等の無駄を省き、利用者と向き合う時間を増やしています。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドライン P.60 事例 19
シフト作成時間を約4分の1に削減
◾️ 施設名:社会福祉法人ウエル千寿会 特別養護老人ホーム萩の風
◾️ 勤務シフト自動作成システム
取り組み内容
複雑なシフト調整を効率化するため、プロジェクトチームを発足しシステムを導入。ベンダーとの勉強会や事前調整を重ね、操作理解を深めた上で本格稼働させた。
効果
担当者5名で月2,320分かかっていたシフト作成業務が1,785分へと535分削減(約4分の1減)された。浮いた時間で見守りや会話の時間が増加した。
ポイント
システム導入前の準備(勉強会や要件調整)を入念に行うことで、スムーズな移行に成功しています。管理業務の時間を現場ケアの時間へと転換できた好例です。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドライン P.46 事例 24
記録時間49%減と人員配置2.87:1を実現
◾️ 施設名:社会福祉法人春秋会 好日苑大里の郷
◾️ 導入したICT:記録システム、インカム、見守り支援機器、移乗支援リフト
取り組み内容
業務の洗い出しと仕分けを行い、ICT活用と周辺業務のアウトソーシングを実施。見守りセンサーやインカムによる情報共有、記録のシステム化を複合的に進めた。
効果
記録時間が889分から456分へ約49%減少。夜勤帯の見守り時間は146分から55分へ短縮され、人員配置2.87:1を実現した。
ポイント
特定の機器だけでなく、業務仕分け(清掃・リネン交換等のアウトソース)と複数のICTを組み合わせたトータルマネジメント事例です。生まれた時間をケアやコミュニケーションに還元しています。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドライン P.45 事例 23
送迎待ち時間20分・朝礼移動10分削減とデバイス一本化
◾️ 施設名:社会福祉法人 洛和福祉会
◾️ 導入したICT:BONX WORK、iPhone、ナースエコール(ナースコール・見守り連携)
取り組み内容
PHSや見守り端末など複数の携行品をiPhone1台に集約。音声ツールとナースコール・見守りシステムを連携させ、通知を耳元で受け取りハンズフリーで即応できる環境を構築した。
効果
朝礼の移動時間が5~10分、送迎の待ち時間が10~20分削減された。ナースコールやセンサー通知のタイムラグがなくなり、転倒リスクの減少や職員の心理的負担軽減に繋がった。
ポイント
「良いシステムも使いにくければ定着しない」という課題に対し、デバイス一本化で装着率を向上させた点が秀逸です。ナースコールを耳で聞き、そのまま会話で応援を呼べる仕組みが安全性を高めています。
◾️ 関連記事:複数の介護システムをiPhoneに一元化し、あらゆる情報を耳へと通知|社会福祉法人 洛和福祉会様
月間83.5時間の残業削減と申し送りの効率化
◾️ 施設名:SOMPOケア株式会社 そんぽの家 西東京
◾️ 導入したICT:記録システム(スマートフォン連動)
取り組み内容
手書き記録の手間を省くため、業務表と連動したシステムを導入。「一ケア一記録」を目標に、ケア直後にスマホで入力・共有する運用にした。
効果
記録内容を申し送りにも活用することで、施設全体で月間83.5時間の残業時間を削減した。ケアプランへの意識も向上した。
ポイント
記録を「後でまとめて書く」から「その場ですぐ書く」へ変えることで、残業削減だけでなく記録の正確性も向上させています。データ分析が可能になり、ケアの質改善に直結しています。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドライン P.58 事例 35
申し送り時間を15分から8分に短縮
◾️ 施設名:医療法人松徳会 介護老人保健施設カトレア
◾️ 導入したICT:インカム
取り組み内容
動線が長く職員を探す手間がある課題に対し、インカムを導入。全職種が常時接続することで、夜勤時の連携や医療処置の応援要請を迅速化した。
効果
即時の情報共有が可能となり、日勤・夜勤前に行う申し送り時間が、職員1人当たり15分から8分に短縮された。
ポイント
物理的な距離(長い動線や階段)を音声通信でカバーした好事例です。申し送りの場にいなくてもインカムで情報を共有できるため、業務を止めることなく引き継ぎが可能になっています。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドライン P.60 事例 40
延べ訪問回数が平均32回減少し夜勤負担軽減
◾️ 施設名:医療法人おくら会 介護老人保健施設リゾートヒルやわらぎ
◾️ 導入したICT:見守り支援システム、インカム、携帯端末
取り組み内容
夜間の徘徊や頻繁なコールに対応するため、認知症専門棟にセンサーとインカムを導入。状態に応じた訪室とチームアプローチを実践した。
効果
定時巡視を一部廃止し、必要な時に訪室する運用へ変更。延べ訪室回数が職員1人1日あたり平均32回減少した。
ポイント
見守りシステムで状況を把握し、インカムで誰が行くか連携するという、目と耳を補うICT活用です。無駄な訪室を減らすことは、利用者の安眠確保と職員の疲弊防止の両方に効果があります。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドライン P.64 事例 47
コミュニケーション量が2~3倍に増加し連携スピード向上
◾️ 施設名:ALSOK介護グループ ホームステーションらいふ羽田大鳥居
◾️ 導入したICT:BONX WORK(音声コミュニケーションツール)、BONX Grip
取り組み内容
スマホ内線による個別連絡を廃止し、常時接続の音声グループ通話を導入。5階建て施設で階を跨いだ一斉連絡や、ハンズフリーでのリアルタイムな情報共有・SOS発信を実現した。
効果
連絡の手間が減りコミュニケーション量が2~3倍に増加。誰がどこにいても一瞬で情報が伝わるため、応援要請や利用者への対応スピードが向上し、安心感と笑顔が増えた。
ポイント
個別の内線番号を調べてかける手間が「会話を諦める」原因だったという現場の課題感が重要です。グループ通話による「つぶやき」レベルの共有が、心理的負担を下げ、チームの助け合いとケアの質向上に直結しています。
◾️ 関連記事:気づきをリアルタイムに発信できる笑顔と声に溢れた大型老人ホーム|ALSOK介護グループ ホームステーションらいふ羽田大鳥居様