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介護ICT導入の完全ガイド|メリット・補助金・事例から現場定着のコツまで徹底解説

介護現場の人手不足や業務負担の増加を背景に、介護ICTの導入が全国で加速しています。
介護記録の電子化や見守りシステムなど、ICT活用は生産性向上と職員の負担軽減に直結します。一方で、適切な進め方をしなければ「使われないICT」になってしまうケースも少なくありません。
本記事では、介護ICT導入のメリットから活用できる補助金制度、実際の導入事例までを網羅的に解説します。
さらに、導入後に成果を出すための現場定着のコツを、具体的なプロセスとともにご紹介します。
1. 介護ICTとは?人手不足を解消し、ケアの質を高める新たな武器
介護ICTとは、情報通信技術(ICT)を介護現場に活用し、業務効率化やケア品質の向上、人手不足の解消を図る取り組みの総称です。
これまで手書きで行っていた記録業務のデジタル化や、センサーによる見守りなど、テクノロジーの力で現場負担を軽減し、より質の高い介護サービスを提供することを目的としています。
主な活用例とツール| 活用例 | ツール |
|---|---|
| 業務効率化 | 介護ソフト、勤怠管理・シフト作成システム |
| 情報共有 | インカム、スマートフォン、タブレット |
| 直接ケア・見守り | 見守りセンサー、排泄予測機器、介護ロボット |
なぜ今、介護現場のICT化が急務なのか(2040年問題)
日本の少子高齢化に伴い、2040年度には約272万人の介護職員が必要とされています。厚生労働省の「第9期介護保険事業計画に基づく介護職員の必要数」(2024年発表)によれば、現状から約57万人の追加確保が必要という深刻な課題が示されました。現役世代が激減する中でこの不足を補い、サービスを維持するには、ICT導入による徹底した業務効率化が不可欠です。
導入によって得られる4つの大きなメリット
直接ケア時間の増加: 介護記録や情報共有を効率化し、利用者と向き合う時間を増やします。
職員の負担軽減: 見守りセンサー等の活用で、心理的・身体的負担を和らげます。
ケアの質の向上: データを活用した科学的な介護が可能になります。
離職防止・定着促進: 働きやすい環境を整えることで、人材の流出を防ぎます。
2. 介護ICT導入の5ステップ:生産性向上委員会が果たす役割
介護施設でのICT導入は、最新機器を選ぶことよりも、生産性向上委員会を中心とした「準備」が成功の8割を決めます。以下のプロセスで着実に進めましょう。
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生産性向上委員会の具体的な目的や設置方法、活動内容の詳細については、こちらの記事をご覧ください。
👉 介護の生産性向上委員会とは何か、目的・設置方法・活動内容を解説
1. 課題の洗い出しと委員会での方針策定
まずは、現場職員を含めた委員会で「なぜICT化が必要なのか」を議論します。介護施設でのICT化は、経営層の独断ではなく、現場の具体的な悩み(記録業務の負担、夜間の見守り不安など)から逆算することが重要です。
2. 機器選定とデモの実施
課題に合わせ、見守りセンサー、インカム、介護ソフトなどのICT機器を選定します。委員会メンバーが中心となり、実際の操作画面やサポート体制を確認しましょう。
3. 契約・設置とインフラ整備
コスト面だけでなく、既存のWi-Fi環境で動作するかなどの通信インフラの確認も必須です。
4. 試験運用と活用・定着
一部のユニットからスモールスタートし、委員会で定期的に「どれくらい業務が改善されたか」のデータを集計します。成功体験を積み上げてから全体へ広げていくのが介護ICT活用の王道です。
成功の鍵:「ICT活用」を業務改善の柱にする
ICT導入は介護現場において劇的な変化をもたらしますが、ツールはあくまで手段です。委員会を軸に、以下の2点を意識してください。
① 委員会の主導による「手段の目的化」防止
「ICTを導入すること」自体がゴールになると、現場は疲弊します。委員会が主導して「このツールで浮いた時間を、入居者様への直接ケアに充てる」という共通目標を掲げることが、ICT活用(介護)を成功させる本質です。
② 「U字の法則」を乗り越えるサポート
ICT導入直後は、操作に不慣れなため一時的に業務効率が低下します。これを「U字の法則」と呼びます。
ポイント
導入初期の負担増を予測し、委員会が現場をフォローする体制(Q&Aの作成や得意な職員によるレクチャーなど)を整えておくことで、現場の離職や抵抗を防ぐことができます。
導入時の懸念点と生産性向上委員会での対策
介護ICT導入における3つの壁に対し、委員会が主導すべき具体的な対策は以下の通りです。
| 懸念点 | 委員会の具体的な対策 |
|---|---|
| 導入コスト | 「生産性向上推進体制加算」の算定や、ICT導入補助金の活用を検討。 |
| ITリテラシーの格差 | 現場目線の簡易マニュアル作成。得意な職員が教える「エバンジェリスト制度」の導入。 |
| 情報漏洩リスク | セキュリティ研修の実施。端末の持ち出し禁止やアクセス権限のルール化。 |
ICT化が進む介護の現場では、委員会が定期的にリスクを点検し、ルールをアップデートし続けることが求められます。
3. 【2024年度最新】ICT導入に活用できる補助金・公的支援
国と自治体の主な補助金制度
導入コストを抑えるため、以下の公的支援を積極的に活用しましょう。
介護テクノロジー導入支援事業(厚生労働省):介護ソフトやタブレット等の購入を支援します。
IT導入補助金(経済産業省):幅広いITツールの導入に利用可能です。
自治体独自の補助金:国の厚生労働省が実施する介護テクノロジー導入支援事業は全国レベルですが、各都道府県もこれを独自に補完・実施しているケースが複数あります。
補助金の種類や対象項目、名称は自治体によって「介護テクノロジー定着支援補助金」「介護ロボット・ICT導入支援プロジェクト補助金」など様々あります。施設所在県の自治体が実施している補助金をご確認ください。
補助率アップの条件「LIFE」とデータ連携
「LIFE(科学的介護情報システム)」へのデータ提供や「ケアプランデータ連携システム」の活用が、補助率引き上げの条件となる場合があります。
その他、複数のシステムをパッケージとして導入することや、複数事業者が協働してICT導入を進めることも補助率アップの条件に該当します。
4. 【課題別】ICT活用事例と失敗しない機器選定の基準
厚生労働省の『介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン』では、介護事業者におけるICT活用による成功事例が豊富に紹介されています。施設の課題に合致するモデルを、選定基準と併せて確認しましょう。
① 記録業務の効率化:転記作業の撤廃と残業削減
■ 施設名:社会福祉法人ライフ・タイム・福島 / 特別養護老人ホーム ロング・ライフ
■ 主要な機器カテゴリ:タブレット端末、スマートフォン、介護記録ソフト(電子帳票)
取り組み内容
記録帳票の多さと転記負担を課題として、帳票の整理・選別を行った上でタブレットを導入し、情報の集約や写真・音声入力を活用した記録の電子化を進めた。
効果
転記作業の削減により記録時間が1人あたり月170.4分短縮され、帳票数も削減されるなど、記録業務の効率化と質の向上を実現した。
選定の基準
一気通貫のシステム連携 単なる電子化ではなく、「介護記録」「情報共有」「請求事務」が一気通貫で連携するシステムを選ぶことが最も効率的です。現場での入力を完結させるため、音声入力への対応など「操作性」も重要な比較ポイントとなります。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドラインP.55 導入事例32
② 夜勤負担の軽減:見守りセンサーとインカムの連携
■ 施設名:社会福祉法人若竹大寿会 介護老人福祉施設・わかたけ青葉様
■ 主要な機器カテゴリ:見守り支援(シート型・カメラ型)、インカム、スマートフォン
取り組み内容
職員の業務負担軽減を目的に、記録業務の削減や夜間巡視の見直しを図るため、施設独自で開発した介護総合支援システムを導入。居室映像やバイタルデータを活用し、緊急度に応じて訪室を判断する運用へ変更した。
効果
端末で居室の状況を確認できるようになり、利用者の状態を即時に把握し、緊急時の対応精度が向上した。また、記録業務や事故検証にかかる時間が削減され、効率的な原因分析と予防策の検討が可能となった。
選定の基準
通知の「即時性」と「連携性」 センサーが検知した情報を、インカムやスマホへリアルタイムに通知できる「連携性」が鍵です。また、睡眠を妨げず自動でバイタルが記録される機能の有無も、ケアの質向上に大きく寄与します。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドラインP.48 コラム3
③ 言葉の壁を解消:外国人職員向け多言語ICT活用
■ 施設名:特別養護老人ホーム美立の杜 ほか
■ 主要な機器カテゴリ:携帯翻訳機、外国人向けeラーニングシステム、タブレット
取り組み内容
着任直後の外国人介護職員は、日本語理解が十分でなく、細かな指示の伝達や介護記録作成に課題があった。そこで、意思疎通の円滑化と学習支援を目的に、多言語対応の携帯翻訳機を導入し、業務や教育の場面で活用した。
効果
外国人・日本人職員間の会話の理解度が向上し、特に来日直後から数か月間の支援に効果があった。また、単語や文章の意味を即時に確認できることで、日本語学習や日常生活面での不安軽減にもつながった。
選定の基準
携帯性と教育リソースの有無 現場で常に持ち歩ける「携帯性」と、対応言語の幅広さが基準です。また、翻訳だけでなく、介護知識を動画で学べる「eラーニング機能」との連動性も、定着支援には欠かせない要素です。
◾️ 引用:生産性向上に資するガイドラインP.65
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👉 介護ICT導入事例10選|業務効率化からインカム活用による連携強化まで
5. 【厚労省ガイドライン準拠】サービス種別ごとのICT活用のポイント
厚生労働省が公開している「介護サービス事業における生産性向上に資するガイドライン」に基づき、訪問系・居宅介護支援・施設系の3つのサービス種別におけるICT活用の重要ポイントを解説します。 現場のリアルタイム報告から、見守りシステムによる夜勤負担の軽減まで、具体的な導入メリットを見ていきましょう。
訪問看護・訪問介護:リアルタイム報告で「直行直帰」を実現

移動の多い訪問サービスでは、タブレットやスマートフォンを活用した「場所を選ばない記録・報告」が業務改善のカギとなります。
ICT導入のメリット
-
転記作業ゼロで残業削減
- 訪問先でスマホやタブレットからケア記録を直接入力。音声入力やチェックボックス方式を活用することで、事務所に戻ってからの「紙からPCへの転記作業」を廃止します。これにより、スタッフの直行直帰が可能になります。
-
緊急時の指示出しをスムーズに
- ビジネスチャットや介護ソフトのクラウド機能を活用し、利用者のバイタル異常などを管理者がリアルタイムに把握。電話がつながらない待機時間をなくし、迅速な指示出しと訪問スケジュールの調整を実現します。
ケアマネジャー:多職種連携をスムーズにする「脱FAX・ペーパーレス」

多くの事業所と関わるケアマネジャー業務では、「情報の一元化」と「ペーパーレス化」による連携強化がポイントです。
ICT導入のメリット
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医療・介護連携のスピードアップ
- MCS(メディカルケアステーション)等の医療介護専用SNSや連携システムを導入。訪問看護師や主治医とセキュアな環境でつながり、電話やFAXのやり取りを削減します。
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書類コストと手間の削減
- ケアプラン(サービス計画書)や提供票をデジタルデータで共有。毎月の大量な書類郵送やFAX送信の手間、通信費・紙代をカットし、本来のケアマネジメント業務(利用者との面談や調整)に時間を充てることができます。
特養・老人ホーム:見守りセンサーで「夜勤負担」を大幅軽減

24時間体制の施設サービスでは、「見守り機器(テクノロジー)」と「記録システム」の連動が、職員の心理的・身体的負担を大きく減らします。
ICT導入のメリット
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夜間巡視の効率化と安眠の確保
- ベッドセンサーやカメラが利用者の睡眠・離床を自動検知。不要な訪室を減らすことで、利用者の安眠を守りつつ、職員の巡視回数を適正化できます。「異常なし」の記録自動化も可能です。
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ケア品質の向上(直接ケア時間の創出)
- センサーデータが自動的に介護記録ソフトへ転送されるため、手書き記録の手間が激減。タブレットでベッドサイド入力を行えば、申し送り会議の時間も短縮でき、その分を入居者への丁寧なケアや見守りに注力できます。
参考資料・出典
【各サービスの詳細資料】
訪問介護・居宅介護支援の方:居宅サービスガイドライン
訪問看護の方:医療系サービスガイドライン
特養・施設系の方:施設サービスガイドライン
6. まとめ:持続可能な介護現場の実現に向けて
ICT導入は、2040年問題を見据えた持続可能な介護現場を構築するための重要な戦略です。まずは自社の課題を明確にし、補助金を活用しながら、現場職員と共に一歩ずつ進めていきましょう。