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【介護×インカム導入事例8選】見守り時間増・残業減を実現した「声のICT」活用術

介護現場における人材不足や業務負担の軽減が叫ばれる中、「インカム(音声コミュニケーションツール)」の導入が注目を集めています。しかし、「導入したけれど使いこなせない」「ただの連絡ツールになってしまった」という悩みも少なくありません。
成功している施設は、単に機器を入れるだけでなく、業務フローの見直しや独自のルール作りを行っています。本記事では、インカム活用によって「歩数半減」や「記録時間49%削減」などの劇的な成果を上げた8つの導入事例を厳選。
現場の取り組み内容と、そこから導き出される成功のポイントを専門家の視点で解説します。
介護インカム導入の教科書
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介護インカム導入の教科書|選び方・費用・メリット・デメリットを全解説
事例①全職員へのインカム配付と業務仕分けによるオペレーション改革
◾️ 施設名:社会福祉法人春秋会 好日苑大里の郷
◾️ 事例No.:23
定量効果
記録時間が889分から456分へ約49%減少。夜勤帯の見守り時間は146分から55分へ短縮され、人員配置2.87:1を実現した。
取り組み内容
記録や連絡に時間がかかる課題に対し、業務の徹底的な見直しを実施しました。掃除などの周辺業務を外部委託してケアに集中できる環境を整備した上で、全職員にインカムを導入。いつでも連絡が取れる体制を作り、センサー情報もチーム全体で共有するようにしました。「チームで支える仕組み」によって、走り回る時間を減らし、利用者と向き合う時間を創出しています。
解説
単に機器を入れるだけでなく、業務の仕分けを行った上で、全職員をつなぐ通信手段としてインカムを位置づけた点が成功の鍵です。清掃などをアウトソーシングして身軽にし、その上で常時接続の環境を整えたことで、スタッフは個人の判断だけでなくチーム全体の動きを感じながらケアできるようになりました。センサーとインカムの連携により、誰もが状況を即座に把握できるため、無駄な動きが削ぎ落とされ、結果として基準を上回る人員配置やケアの質向上という大きな成果につながっています。
応用のポイント
「捨てる・任せる・つなぐ」の順序を守る。 インカムを入れる前に、まず「専門職でなくてよい業務」を外部やロボットに任せ、業務をスリム化してから職員同士をつなぐと、効率化の効果が最大化します。
事例②フロア・部署別に9つのチャンネルを設定し情報の混線を防止
◾️ 施設名:医療法人緑の風 介護老人保健施設いこいの森
◾️ 事例No.:39
定量効果
介護職員1人1日当たりの見守り時間が88分から117分へ約30%増加した。
取り組み内容
5階建ての施設で発生していた連絡の遅れや「伝言ゲーム」状態を解消するため、インカムを導入しました。しかし、全員が一斉に話すと情報が混線してしまうため、フロアや職種ごとに9つのチャンネルを設定。必要な情報が必要な人にだけ届く環境を整えることで、静かな環境を保ちながら、的確でスムーズな連携を実現しています。
解説
全員がつながることはメリットですが、大規模施設では情報過多がノイズとなり、かえって業務を阻害するリスクがあります。この事例の優れた点は、フロアや役割ごとに細かくチャンネル(通信グループ)を分け、情報の交通整理を行ったことです。「必要な時に、必要な相手とだけつながる」設計にすることで、静寂な環境を守りつつ、スタッフの集中力を維持しています。また、夜間など人が少ない時間帯の運用ルールも決めることで、時間帯や状況に応じた柔軟なネットワークを構築しています。
応用のポイント
「情報の交通整理」を行う。 導入規模が大きい場合は、全館一斉放送ではなく「フロア単位」「職種単位」など、話す内容に応じたグループ分け(チャンネル設定)を最初から設計図に入れておくことが重要です。
事例③全職種常時接続により長い動線と階段移動のロスを解消
◾️ 施設名:医療法人松徳会 介護老人保健施設カトレア
◾️ 事例No.:40
定量効果
日勤・夜勤前に行う申し送り時間が、職員1人当たり15分から8分に短縮された。
取り組み内容
建物が広く、らせん階段もある構造のため、職員を探しに行く移動負担が課題でした。そこで、介護職だけでなく看護師やリハビリ職など全職種がインカムを装着。姿が見えなくても声を掛ければすぐに応答がある環境を構築しました。スタッフルームに集まらなくても情報共有が可能になり、移動の疲れを軽減しつつ、迅速な連携を可能にしています。
解説
施設のハード面(広い敷地、長い廊下、階段)が引き起こす「移動」という最大の無駄を、音声テクノロジーというソフト面で解決した好事例です。物理的に離れていても、インカムを通じて「隣にいるような感覚」で会話ができるため、わざわざ人を探したり、集合したりする必要がなくなりました。特筆すべきは、介護職だけでなく全職種が装着している点です。これにより、医療的な判断が必要な場面やリハビリ連携においてもタイムラグがなくなり、施設全体がひとつのチームとして機能しています。
応用のポイント
「職種の壁」を通信で超える。 介護職だけで完結させず、看護師やリハビリ職も同じネットワークに参加させることで、「探しに行く」「PHSにかける」という見えないタイムロスを施設全体で削減できます。
事例④入浴誘導の連携に活用し「必ず返事をする」ルールを徹底
◾️ 施設名:医療法人生愛会附属介護老人保健施設生愛会ナーシングケアセンター
◾️ 事例No.:43
定量効果
利用者1人に対してかかっていた入浴業務時間を39分から34分に(5分間)短縮できた。
取り組み内容
脱衣所とフロアが離れている入浴介助において、タイミングのズレにより利用者を裸で待たせてしまう課題がありました。インカムで「今から案内します」「準備完了」とこまめに連絡を取り合う運用を開始。お互いの顔が見えないため、「必ず返事をする」というルールを徹底することで連携をスムーズにし、利用者が寒さを感じずに済む快適な入浴支援を実現しています。
解説
インカム導入時によくある「相手に伝わったかわからない」という不安を、極めてシンプルな運用ルールで解消しています。「必ず返事をする」という取り決めは、単なる確認作業以上に、スタッフ間の信頼関係を強める効果があります。この事例の本質は、業務効率化自体が目的ではなく、「利用者を裸で待たせない」という尊厳の保持(利用者のQOL向上)を目的としている点です。結果として一人当たり5分の短縮が実現しましたが、それはスムーズな連携が生んだ副産物です。
応用のポイント
「返事」をルール化する。 相手の表情が見えないツールだからこそ、「ラジャー」「了解」といった短い返事を徹底するルールを作るだけで、現場の安心感と連携スピードが劇的に向上します。
事例⑤見守りセンサーの通知をインカムで共有し対応・訪室を最適化
◾️ 施設名:医療法人おくら会 介護老人保健施設リゾートヒルやわらぎ
◾️ 事例No.:47
定量効果
夜間の延べ訪室回数が職員1人1日あたり平均32回減少した。
取り組み内容
夜間の定時巡視で睡眠中の利用者を起こしてしまう課題に対し、ベッドセンサーとインカムを連動させました。起き上がり通知が届くと、インカムで「誰が対応するか」を即座に調整し、必要な時だけ訪室する運用へ変更。無駄な足音や訪室を減らすことで、利用者が朝までぐっすり眠れる環境を守りつつ、職員の負担も軽減しています。
解説
「目(センサー)」で状況を把握し、「耳と口(インカム)」で判断・行動するという、ICT機器のベストミックス事例です。センサー通知だけでは「誰が行くか」までは決まりませんが、音声通話を組み合わせることで、通知が鳴った瞬間に役割分担が可能になります。これにより、複数人が同じ部屋に駆けつける重複対応や、逆に誰も行かないといったミスを防げます。訪室回数の削減は、職員の余裕を生むだけでなく、利用者の安眠を妨げないというケアの質的向上を如実に表しています。
応用のポイント
「トリアージ(優先順位判断)」を共有する。 センサー通知に対して、反射的に動くのではなく、インカムで「今行く必要があるか」「誰が行くか」を一呼吸置いて相談する運用にすると、無駄な動きがなくなります。
事例⑥スマホ内線を廃止して常時接続のグループ通話へ移行

◾️ 施設名:ALSOK介護グループ ホームステーションらいふ羽田大鳥居
◾️ 事例No.:-
定量効果
職員間のコミュニケーション量が以前の2倍~3倍に増加した。
取り組み内容
以前のPHS内線では番号を調べる手間があり、連絡を躊躇することがありました。これを常時接続のグループ通話に切り替えることで、独り言のような「気づき」も全員に共有できる環境を構築しました。「ありがとう」や「大丈夫?」といった声かけが自然と増え、施設内の雰囲気が明るくなると同時に、緊急時のSOSも瞬時に出せる安心感が生まれています。
解説
「電話をかける」という行為には、番号を調べたり相手の状況を気遣ったりする心理的コストがかかります。この事例では、常時接続によってそのコストをゼロにし、業務連絡未満の「ちょっとした気づき」や「感情」の共有を可能にしました。コミュニケーション量の倍増は、チームの心理的安全性が高まった証拠です。「助けて」と言いやすい環境は、スタッフの孤独感を解消するだけでなく、リスクの早期発見にもつながります。インカムをチームビルディングの基盤として活用している点が先進的です。
応用のポイント
「つぶやき」を許容する。 業務連絡だけでなく、「気づき」や「感謝」など、柔らかい会話を推奨することで、若手や新人が発言しやすい空気(心理的安全性)を作ることができます。
事例⑦多機種をiPhone1台に集約しナースコールを耳元で受信

◾️ 施設名:社会福祉法人 洛和福祉会
◾️ 事例No.:-
定量効果
朝礼の移動時間が5~10分、送迎の待ち時間が10~20分削減された。
取り組み内容
PHSやインカムなど複数の機器を持ち歩く負担を解消するため、iPhone一台に機能を集約しました。ナースコール通知を耳元のイヤホンで直接受け取り、ハンズフリーで通話が可能。場所に縛られずインカムで朝礼や一斉連絡ができるため、移動時間が削減されました。両手が空くことで介助中もスムーズに連携でき、業務効率と安全性が向上しています。
解説
現場の不満になりがちな「デバイスが重い・多い」という物理的な課題を解決し、装着率を100%にすることでシステムの真価を引き出しています。この事例の革新性は、ナースコールを「耳で聞く」運用に変えた点です。コール音を聞きながら、その場ですぐにインカムで「今、手が離せないのでお願いします」と応援を要請できるため、対応のタイムラグが極小化されます。ユーザビリティ(使いやすさ)の向上が、結果として施設全体の生産性と安全性を大きく高めています。
応用のポイント
「ハンズフリー」環境を徹底する。 介助中は両手が塞がるため、スマホを取り出さずに「耳で聞いて、声で操作する」環境を作ることが、現場のストレスを減らし、装着率(定着率)を高める鍵になります。
事例⑧センサー通知への対応をその場で音声相談し移動ロスを削減

◾️ 施設名:ALSOKジョイライフ株式会社 ローズライフ京都
◾️ 事例No.:-
定量効果
職員の1勤務あたりの歩数が半減した。
取り組み内容
広い施設内での移動負担を軽減するため、見守りセンサーの通知をインカムで受信する運用を導入しました。通知に対し「誰が対応するか」をその場で相談できるため、対応中の利用者のそばを離れずに状況判断が可能になりました。とりあえず現場へ向かう無駄な移動がなくなり、心に余裕を持って目の前のケアに集中できる環境が整っています。
解説
「歩数が半減した」という成果は、いかにこれまでの業務に「確認のための移動」という無駄が含まれていたかを示唆しています。センサー通知に対して、まずは音声で連携し、誰が対応するかを決めてから動く。このプロセスを経ることで、対応中の利用者を置いて現場へ走るというリスクある行動を回避できます。利用者のそばを離れずに次のアクションを判断できることは、目の前の利用者の安心感にもつながります。スタッフの体力を温存し、そのエネルギーを直接的なケアに注ぐための、賢いICT活用事例です。
応用のポイント
「動く前に話す」習慣をつける。 何かあったら走るのではなく、まずその場でインカムで状況を確認し、誰が動くのがベストかを決める。このワンクッションが、結果として最短・最少の動きを実現します。
まとめ
インカム導入で大きな成果を上げている事例に共通しているのは、ツールを「ただの無線機」としてではなく、チームの連携を高めるための「基盤」として捉えている点です。
- 業務を整理してから導入する
- 必ず返事をするなどのルールを決める
- センサーやナースコールと連携させて「耳」を活用する
これらのポイントを押さえることで、インカムは単なる連絡手段を超え、スタッフの無駄な動きを減らし、利用者へのケアの質を高める強力なパートナーとなります。まずは自施設の課題に合わせた「スモールスタート」から、声のICT活用を始めてみてはいかがでしょうか。